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読書しながら稽古する #1 『人はなぜ言葉を話すのか』からイルカの話

6 日前
読了時間: 4分

更新日:6 日前


作成者 山崎裕也


こんにちは、山﨑です。本が好きなので、稽古の内容と、最近読んだ本をリンクさせながらブログを書きたいと思います。


最近読んでいるのは『人はなぜ言葉を話すのか』(スヴェルケル・ヨハンソン著)という本です。この本を手に取った理由は、言葉と身体は繋がっていて、体の調子がいいと声をよく響かせる、みたいな関連性に前から興味を持っていたし、HIxTOの稽古でも体を動かしながら発声をするので、今読んだら面白そう!と思って買いました。


さっそく面白かった部分を紹介します。94ページです。この本の第二章では、コミニュケーション能力のある動物と、人間との比較を通して、人間だけが持つ言語能力とは何か?ということを精緻な文章で論じているのですが、そのなかで、イルカの「シグネチャーチューン」(別名:シグネチャーホイッスル)というのが紹介されていました。


イルカが音波をつかって互いにコミュニケーションを取ったり、エコーロケーションで周囲の地形や生物の配置を察知することはよく知られていますが、「シグネチャーチューン」というのは、各イルカの個体が自分の名刺がわりにもっている鳴き声のことで、自分の居場所を知らせたり、仲間を呼んだりするのに使用するそう。


興味深いのは、「私はここにいます」というメッセージが、割り振られた固定の音列を使用するのではなく、最初は無意味な音列であったものが、徐々にその個体を識別するメッセージとなる点。現生人類だったら、「私はここにいます」=「I’m here」でよろしく、みんなこれを覚えてね、というなんとも画一的な方法で集団コミュニケーションをとりかねない。イルカは、さきに存在があり、身体があって、音がある。「ピルペトプリュリュー!」でも、「ピクルルテナレレー!」でもそのイルカが何度もそれを発すると、「あいつだ!」となる。ちょっと大げさに言うと、その人っぽさ(そのイルカっぽい声)から言語が誕生してるのです。


しかも、イルカはこのシグネチャーチューンの応用がすごくて。自分のシグネチャーチューンを発して居場所を知らせるだけでなく、親しい個体のシグネチャーチューンを発することもあるらしいのです。それは状況によって「ここにいるよ」の応答として「私はこっちにいるよ」という意味になったり、「一緒に泳げて楽しかったよ」という意味にもなる。他者の身体から、自分のシグネチャー・チューンが発信されるとき、そこになにか社会らしきものを感じざるを得ません。YouTubeでイルカの声を聞ける動画を発見したので、貼っておきます。ぜひ、想像を膨らませながら聞いてみてください。



ここで、シグネチャー・チューンから、「シグネチャー・ムーブメント」という概念をつくってみたいと思います。ひとまず仮に、「その人っぽい動き」という意味で話を進めます。


人によって骨格も筋肉のつきかたも、普段の身体の使い方も違うので、それぞれ動きのクセみたいなのがありますが、ダンスの現場では、そのクセをノイズとして排除する向きがあり、ダンサーの肉体は洗練されていく。そうしていくうちに、画一的な身体になっているのではないか、というのが最近の思うところ。あるジャンルに特化すればするほど、そのための身体になっていきます。


おなじことが、職業/スポーツ経験/趣味/思考などさまざまなレイヤーで、身体に記憶・記録として刻み込まれています。そのすべて総体として、その人の特徴的な動きとしてシグネチャー・ムーブメントというようなものがあるような気がするのです。そしてその経験的なものの外側にも、何かのしるしがあるような気がしてなりません。


そういったシグネチャー・ムーブメントは、イルカが呼応しあうように、自分が「これだ!」と決めるものではなく、ある集団のなかで、他者がそのしるしを感じ取るものだと思います。その他者の身体から、自分のシグネチャー・ムーブメントが発せられた時、なにが生まれるのか。


HIxTOでは、ペアワークやシアターワークなどで、他の人のうごきから何か影響を受けながら動く、というワークをよくやります。ここでよく私はその動きの様式や形式を模倣してしまいますが、今回このブログを書いて、その人のシグネチャー・ムーブメントを感じながら動いたら良いのかも、と思いました。単に模倣しようとすると、半歩遅れるし、リアルタイムで完コピするのは不可能だ。そこで、呼吸を合わせようとしてみると、不思議と(うごきが揃うわけではないけど)文字通り息が合う瞬間が(たまに)ある。この時、呼吸に意識が持っていかれることで、うごき自体から意識が解放され、無意識でシグネチャームーブメントを捉えられる瞬間があったのではないかと思います。


以上、「読書しながら稽古する」シリーズの第一稿目でした。HIxTOの舞台は、言語学とか心理学が好きな人にもおすすめです。上記のような、あらたな身体言語が生まれる瞬間、身体コミュニケーションが生まれる瞬間に立ち会えるかもしれません。



Photo by 飯田英仁


 
 
 

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